当財団の「設立趣意書」は、設立者であり初代理事長の前田光子さんが、生涯をかけて守ってきた阿寒の森の全てを財団に託す思いを切々と謳ったもので、当財団の「憲法」とも言えるものです。
この「設立趣意書」には、財団が果たすべき使命が記述されており、その中に“永遠”という二文字が付された使命が二つあります。その一つは、前田一歩園という名を“永遠”に残すこと、そして、もう一つは大自然の恵みを多くの人達が“永遠”に楽しめるよう森林を守り抜くことです。
猛烈なスピードで移り変わる社会、経済の中にあって、“永遠”をその事業の使命とすることに、何と悠長なとの印象を持たれることもあるでしょうが、当財団の中心的な事業である森林を保全する事業は、100年、200年という長期的な展望を持って取組んでいるものであり、そもそも、森林は破壊と再生を繰り返しながら長い時を経て今日の姿を見せていることを考えますと、私の中に“永遠”という言葉に違和感はありません。“永遠”に続けることを使命とされていることに誇りを持ちながら、今の時代、私達のやるべきことは何なのかについて、しっかりと考えていかなければならないと思います。
さらに、当財団が前田家から引継いだ重要な考え方があります。それは「前田家の財産は全て公共事業の財産とす」という考え方です。もとより、公益的な事業を展開するために設立された当財団ではありますが、当財団の所有する森林も土地も温泉も、その所有の形態を考えますと、阿寒湖温泉の住民の皆様の生活や観光産業に深く関わっており、これらの財産は、勿論、当財団のものではありますが、いわば、地域の財産であり、地域の資源でもあります。当財団の事業の進め方が地域に及ぼす影響を考えますと、将来に禍根を残すことにならないようしっかり対応していかなければなりません。
財団法人化されてからは、特に公益的機能に力点を置いた森林保全事業や様々な自然保護に関する事業を行っていますが、これも、阿寒湖温泉に立地しているからこそ出来ることです。将来にわたって、ここに在って、ここで仕事をしていることを評価していただけるよう、地域のため、そして、森林と財団の“永遠”なることを目指し、仕事を進めて参りたいと考えています。
就任に当って(平成28年6月就任)