森林経営・管理に関わる調査研究
もともと森林は多様な機能を持つものであるが、開拓以来の北海道の天然林施業は、必ずしもそれを意識するものではなかった。その結果、多くの森林は過大な木材の搾取によって、質量ともに貧弱な森林へと変わりつつある。
近年、社会の森林に対する要求はますます多様になり、森林の効用には過剰とも思われる期待が寄せられている。しかし、林業を取り巻く状況は厳しさを増し、実際の森林への働きかけは、必ずしも充分には行われていない。簡単に言えば何もしないで、天然林に限らず森林全体が放置されているのが現状である。このままでは、森林を維持管理する人はもとより、システムそのものが無くなってしまうことになる。
前田一歩園の森林は、阿寒湖の集水域の大部分を占め、阿寒国立公園の景観および自然環境の保全の上で大きな役割を果たしている。しかし、その森林も過去には大量に伐採が行われた時期もあり、山火事や風害によっても大きな被害を受けてきた。しかし、天然更新が良好な立地条件とともに、近年のキメの細かい施業によって、森林の質と量は着実に回復しつつある。そして、その基になるものは、確固たる目的意識と、それを支える技術集団の存在であろう。
既に述べたように一歩園の森林の役割は、景観はもとより、河川、湖沼の保全から観光、自然教育、街作りなど、ますます多様なものになっている。このような森林の機能を発揮させるには、多様な森林に対する、多様な働きかけが求められる。既成の画一的な方法だけではなく、地域の森林に即した、新しい施業体系を創ることが必要であろう。
以上の観点に立って、この調査は一歩園の森林の現状を解析したものである。これらの知見が、一歩園の目的とする森林の維持管理に資することを期待している。そして重要なことは、様々な試験や施業の結果を検証し、森林にまた還元していくことであろう。これらの努力の成果は、今後の北海道の天然林施業にとって、大きな指針となるに違いない。